多生にも値えぬ弘誓の強縁

親鸞会 花蓮会館

 すべての人は、苦を厭い、幸福を求めている。この借金さえ返せば、病気さえ治ればと、苦しみの坂を上るのも、幸せが待っていると信じるからである。だが現実は、さらなる急坂が待っている。我々は決して、苦しむために生きているのではない。苦悩の坂をなくして、幸福になることこそ、古今東西、変わらぬ人生の目的なのである。

 では、どうすれば幸せになれるのか。仏教では、幸福も不幸も、自分の運命の全ては、自分の行為が生み出したものであり、絶対に例外はないと教えられている。

 真面目に勉強すれば試験に合格するし、人一倍、働けば成功する。身体に悪い物を食べていたら、病気になる。

 行為と運命の関係を、仏教の根幹「因果の道理」では、

「善因善果 悪因悪果 自因自果」

と教えられている。善い行いは幸福を、悪い行いは不幸を引き起こす。自分に現れる善果も悪果も、全て自分の行為が生み出したものであり、例外は万に一つもないのである。

「善因善果」は誰しも納得するだろうが、悪果が来た時は、どうだろう。「オレがいつ、こんな結果を受ける種まきをした」と反発し、「あいつのせいだ」「こいつのせいだ」と、恨んではいないだろうか。それこそ、恐ろしい種まきをしている姿である。他人を恨み、呪っている自分は、どんな結果も自業自得と、反省し懺悔しなければならないのである。「悪因悪果 自因自果」を認められないのは、心の種まきを忘れて、身体の行いだけを見ているからだ。仏教では、我々が行いをするものに、心と口と身体の三つがあると説かれる。中でも、口や身体を動かすのは心だから、仏法は心の行い(意業)を最も重く見る。では、いちばん大事な意業で、何をしているだろうか。

 親鸞聖人が、極楽浄土から現れられた方とまで尊敬されている善導大師(中国の浄土仏教の大成者)は、

「一人一日のうちに八億四千の憶いあり、念々になすところこれみな三塗の業なり」

と仰っている。一日に八億四千遍、心が変わり、しかも悪いことばかり思っていると、懺悔されている。これは、善導大師お一人のことではない。万人の実相である。

 心が悪ばかり思っているから、その心が動かす口や身体の行いも、全て悪に染まる。そんな極悪人が、本当の幸福になれるはずがなかろう。悪因しか造っていない極悪最下の私たちが、極善無上の絶対の幸福に救い摂られるのは、全く阿弥陀仏の本願力によってである。

 この世のことでも、二束三文の炭素に、高温高圧が加わればダイヤモンドと輝くように、強い縁(「原因」が「結果」を引き起こすのを助けるもの)で結果が大変わりすることがある。だが、弥陀の本願のお力は想像を絶する力だから、蓮如上人は「不可思議の願力」と仰っている。不可思議の願力を、不可思議と知らされた親鸞聖人は、弥陀の本願を「弘誓の強縁」と仰って、救われた驚きと喜びを、こう記されている。

「噫、弘誓の強縁は多生にも値いがたく、真実の浄信は億劫にも獲がたし」
(『教行信証』総序)

 我々の生きる目的は、「弘誓の強縁」に値(あ)わせていただき、永遠の幸福(真実の浄信)を獲ることである。だがそれは、コンビニに行くような、簡単なことではない。多生億劫にも値えなかったと、親鸞聖人は仰せである。幾億兆年、求めても値えなかったことに値おうとしているのだ。万劫の重みがある一座一座を、真剣に聞かせていただこう。


あなたが仏教から学べるたった一つのこと

 

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