空調編
空調編〜(4)不快を与えない冷暖房設備
2000畳の大講堂には、どこに座っても、暑すぎず冷えすぎない、どんな人にも適温と感じられる空調設備が設置してあります。
どのような設備なのか、関係者に尋ねました。。
―――大講堂には、除湿空調といわれる設備が導入されていると聞きました。普通の空調と、どこが違うのですか。
これだけ大きな空間で、何千人もの人が同じく、適温と感じる状態を作るということは、普通の空調では大変むずかしいものがあります。
さらに個人の体感温度には差があります。年齢、性別、体格の違いにより、同じ温度でも、暑さの感じ方はまるで違っています。以前は、同じ日の同じ会場で、「寒い」と「暑い」双方の声があり、そのつど、対応に苦慮してきました。
人が密集する所では、温度だけでなく、湿度も高くなります。込み合った電車に乗ると、窓ガラスが曇っているでしょう。
この高い湿度が、不快感の要因の一つです。温度は同じでも、湿度が下がると快適だと感じることは、多くのデータで証明されています。
一般に、温度は高くとも、湿度が下がると涼しく感じる。例えば、アメリカ西海岸は、気温の割りに涼しいことで知られていますが、その理由は湿度の低さにあります。ここの気候に近い〈気温27度、湿度40%〉の状態を、デシカント空調なら実現できるのです。
通常の冷房より、室温を高く設定したまま涼感を出せますから、「寒い」という声は最小限に抑えられるはず。
そのため、2000畳の大講堂には、除湿を積極的に行う『デシカント空調機』が導入されています。
シリカゲルのような吸湿材(デシカント)で、冷房の時、大講堂の湿気を効率よく吸収してくれるのです。
―――どんなものか、もう少し詳しくお願いします。
吸湿材の円盤が回っていると思ってください。(下図)半分は、大講堂の空気から、湿気を吸収している部分です。後の半分では、ガスバーナーで吸湿材を乾燥させ、水分だけ屋外へ放出します。
吸湿材を湿らせたり乾かしたりして、繰り返し除湿し、普通の空調機では難しい、低湿度の環境を作り出すのです。
除湿空調の基本原理
※吸湿材の円盤が回転し、吸湿と乾燥(再生)を繰り返して、低温度の環境を実現する。
―――吸湿材の性能は落ちないのですか。
10年くらいたったら、取り替えます。
―――この空調機は、どこに設置されるのでしょうか。
正本堂4階の空調機械室です(3階大講堂の左右上部)。
冷気や暖気はここで作られ、ダクトを通って、大講堂天井(最高12・5メートル)から供給されます。(下図)
大講堂の冷暖房(断面図)
参詣者
―――天井から出すのですね。でも、冷たい空気は重いから下りてくるでしょうが、温かい空気は軽いので、天井に溜まったままになるのでは。
そのとおりです。そこで暖房を始める時は、十分に暖まるまで、温風を横から出します。また、低い位置で吸い込むことにしていますので、温風が下りてくるのです。
―――出すだけじゃなく、吸い込むのですか。
大講堂の天井の高さは、左右が低くなっています。そこに、吸い込み口を設けているのです。
ちなみに、冬は空気が乾燥しますから、暖房の際は除湿せず、逆に加湿しています。
―――第一講堂(現・願海)では、冷暖房の吹き出し口を多くして、一ヵ所から出る風を少なくし、騒音を防いでいると聞いています。大講堂はどうですか。
同じように、吹き出し口が多めになっています。風速が弱まるので、騒音を防ぎ、また、冷温風が参詣者に当たって不快感を与えないように造られています
。
関係者の努力の甲斐あって、2000畳の講堂では、どの場所に座っても、夏も冷えすぎず、暑すぎず、高原のような環境で親鸞聖人の教えを聞くことが出来るのです。
プロジェクト2000畳