浄土真宗親鸞会「法楽寄席」

演目「死の縁 無量」

 えー、魚屋といいましても昔は、天秤棒を肩にかけ、ほうぼう売って歩く棒手振りというのがありました。その棒手振りの熊五郎、いつもなら威勢のいい売り声も、流行の風邪か、力が入りません。

法楽寄席「え〜魚屋で。え〜あさりにしじみ。へっくしょん!」

「よせよ魚屋さん。そんな声じゃ、風邪がうつっちまいそうで誰も来やしないよ」

「へえ、すみません」

「最近の風邪はたちが悪いんだ。かかった、と思ったらたちまち高熱が出て、パタッと逝っちまうって話さ。あんたもさっさと家帰って寝たほうがいいよ」

「へへ、脅かさないでくださいよ。風邪なんかで人が死ぬもんですか」

「それが死ぬんだよ。ころっと逝くんだ。ころっと。この界隈でも葬式を出したばかりよ。気をつけな」

 そりゃ大変!さっさと売って帰ろうと、天秤棒を担いで「あさり〜、しじみ〜」とやってますと。

「おう、魚屋。今おっ母の看病しているとこだってえのに、『あっさり、死んじめえ』とはどういう了見だ!」

「いいえ、あさりにしじみと」

「しょぼくれた声出すから、あっさり死んじめえに聞こえるじゃねえか。本当に死んじまったらどうすんだ!とっとと行きやがれ!」

「すみません」

 こんな時は、何やったってうまくいかねえと、帰り支度をしておりますと、後ろから呼び止める声がいたします。

医者「これ、そこの魚屋」

「へ?あっしですかい?」

医者「そう、そなたじゃ、風邪を引いたな」

「分かりますか」

医者「分かるとも。これでも医者じゃ」

「そりゃよかった。じゃあちょっと診ておくんなさいよ。流行の風邪なら大変なんだ。まだ死にたくはねえ。助けておくんなさい」

医者「では診てしんぜよう。でも風邪は治せても、死ぬのは止められないぞ」

「そりゃま、そうでしょうけど、今はまだ死にたくねえんでさあ」

死の縁無量

医者「だがな、風邪は治っても、その心はどうするつもりじゃ?」

「心をどうするってねえ、風邪さえ治してくれたらそれ以上の野暮は言わねえや……」

医者「いや、今風邪で死ぬのを逃れても、いずれまた死ぬ羽目になる。また慌てふためくぞ。だから急ぎ解決すべきは、後生真っ暗なその心のほうではないか?

「何だか難しい話になってきたねえお医者さん。でもあんたの言うとおりかもしれねえな。死なずに済んだのを助かったてえなら、風邪が治ったところで助かったわけじゃねえ。死ぬのがちょっと先送りになっただけだもんな」

医者「さよう。助かったといっても、一時助かったにすぎんのだ。この辺の漁師さんから聞いたことじゃがな、お父つぁんも爺さんも皆代々、漁に出て海で亡くなったんだそうだ。だから『そんな恐ろしい海に、よく毎日平気で漁に出られるのう』って言ったんじゃよ」

「すると?」

医者「その漁師が、『じゃあ、あんたのお父さんはどこで死んだんだ?』って言うからな、『そりゃ畳の上だ』『じゃあおじいさんは?』『やっぱり畳だ』。するとこう言うんだ。『そんな恐ろしい畳の上で、あんたよく平気で寝ておれるねえ』だとさ」

「ははは、なるほど。どこにおろうが死は免れねえってわけか。そりゃ道理だ」

医者「死の縁無量だ。だから、いつ死が来ようと往生一定、一切が障りとならない身になることこそ、急がねばならぬ最大事なんじゃよ」

「あんた、ただの医者じゃないね。もっと続きを聞かせておくんなさいよ」

医者「うーん、でも風邪も治さねばなるまい。スズキ(続き)は明日ということで」

「いいや、明日と言わず、今日願いマス」

 


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