比叡下山
親鸞聖人は真剣に修行に励めば励むほど、絶対に助からないわが身の姿が知らされ、次のように告白されています。
「定水を凝らすといえども識浪しきりに動き、心月を観ずといえども妄雲なお覆う。しかるに一息追がざれば千載に長く往く」(歎徳文)
大乗院から見る琵琶湖は美しい。うっそうとした樹木の間から、鏡のように澄み切った水面を眺められ、聖人は、
「ああ、あの湖水のように、私の心は、なぜ静まらないのか。静めようとすればするほど、散り乱れる。どうして、あの月のように、さとりの月が拝めないのか。次々と、煩悩の群雲で、さとりの月を隠してしまう。このままでは地獄だ。この一大事、どうしたら解決ができるのか」
と、悲泣悶絶せずにおれませんでした。
明けて、聖徳太子から「あと10年の命」と予告された最後の年、29歳を迎えられた親鸞聖人は、「天台宗法華経の教えでは救われない」と絶望され、ついに、下山を決意されました。
9歳で出家されてより、20年めのことです。
比叡山から琵琶湖を望む