三大諍論 (じょうろん) 2
体失不体失往生の諍論 2
「何を親鸞殿は仰る。聖道仏教は此土入証だが、わが浄土仏教は彼土得証、死んだ後に極楽浄土へ参らせて頂くからこそ、往生浄土と言うのではありませんか。どうして凡夫がこの世で助かる(不体失往生)ことができましょうぞ」
それに対して親鸞聖人は、
「善恵房殿の仰ることは、親鸞よく承知していますが、あなたの仰るのは結果でありましょう。誰もが浄土往生できるのではありますまい。死後、浄土往生できるのは、現在、心の往生のできた人のことではありませんか。いま救われないで、どうして後生助かるでしょうか」
鋭い聖人の追求に憤激した善慧房は、
「あなたが、それほど自信もって仰るのなら、この世で助けるという弥陀の本願文をあげられますか。それができなければ、あなたの独断と言われても仕方がありますまい。その経典の根拠を出して下さい」
と迫りました。
親鸞聖人はその時、いよいよ弥陀の本願真実を明らかにする勝縁きたりと微笑なされ、
「善慧房殿、それは弥陀の本願の『若不生者不取正覚』の御文でございます」
「何を申される、親鸞殿。あなたは何か勘違いなされてはおられぬか。あなたの示された『若し、生まれずば正覚を取らじ』の弥陀の誓いは、一度、死なねば生まれることはできませんから、私の正しいことを証明する御文ではありませんか」
自信満々、善恵房は反論しました。
ところがすかさず、聖人の発言が四方を圧しました。