蓮位房、霊夢を見る
『御伝鈔』上巻4段や、『口伝鈔』13条の蓮位房の霊夢を記しておきましょう。
建長8年の春、親鸞聖人は84歳のご老体で、いささかご病気がちであった。聖人昵懇のお弟子・蓮位房と顕智房がご看病申し上げることが多かった。
そんなある日、蓮位房が尋ねた。
「顕智房殿、あなたはわが聖人を、いかなるお方と思っておられますか」
「私は、まさしく仏のご化身と信じております」
キッパリ、顕智房は答えたが、どうも蓮位房は、即座に同意しかねるようだった。
「私もある時は、そう感ずることもありますが、ある時はどうだか、そうでもなさそうに思えることもあります」
正直な告白に顕智房は、微笑しながら確信ありげにささやいた。
「そう思われましょうが、そのうちにきっと、お分かりになりますよ」
ところが2月9日の未明、蓮位房は明らかな夢を見た。聖徳太子が親鸞聖人を礼拝して、こうおっしゃっているではないか。
「私は、大慈大悲の阿弥陀仏を敬って、礼拝いたします。
あなたは、微妙の教法を、この五濁悪世界に弘め、あらゆる衆生に、必ず無上覚を得させるために、来生なされた尊いお方であります」
夢覚めた蓮位房は驚いた。
さては、わが聖人は阿弥陀仏のご化身であったか、いままで、さまで尊く思わなかったことのあさましさよと、感泣した。
それにしても、顕智房は不思議なことを言う人よ。
この人もまた、ただ人ではなさそうだと、驚いて語ったといわれています。
これらの霊夢や、「観音の化現」と「弥陀の化身」の相違について、覚如上人は次のようにおっしゃっています。
「祖師聖人あるいは観音の垂迹とあらわれ、あるいは本師弥陀の来現と示しましますこと明らかなり。弥陀・観音一体異名、ともに相違あるべからず」(口伝鈔13条)