親鸞聖人のキーワード
親鸞聖人の教えで最も大事な仏語は、「名号」「信心」「念仏」です。これらキーワードが鮮明になれば、浄土真宗の全体像が分かります。
この3つは密接な関係にあり、単独で意味を知ることはできません。平易に例えれば、新型コロナで高熱が続き咳が止まらず、強い倦怠感に襲われていた人が、名医の処方した「名号」という特効薬を飲んで平熱になり、咳も治まり完治した状態を「信心」といいます。
全快した患者は、薬を創って下さった名医と、飲むよう勧めてくれた案内者に感謝し、お礼を言わずにおれなくなります。そのお礼にあたるのが、「念仏」です。
ここで薬に例えた「名号」とは、あらゆる仏の師である阿弥陀仏の創られた「南無阿弥陀仏」のことであり、「六字の名号」といわれます。弥陀が想像もできない長期間のご苦労の末、名号を完成なされたのは、全ての人が、死んだらどうなるか分からぬ「死後が暗い心の病」にかかっているからです。これは釈迦を始め一切の仏方も手に負えず、サジを投げられた難病であり、人生を苦に染める根元だと聖人は説かれています。
だからこそ大宇宙無二の名医である弥陀は、「全ての人の『死後が暗い心の病』を治し、万人を無上の幸福に救う」と誓われ、名号の大妙薬を創って下されたのです。仏教では、この特効薬の効能を一言で「破闇満願」と説かれています。
まず「破闇」とは、「死後が暗い心の病」を完治させ、必ず極楽浄土に往けるとハッキリした「死後が明るい心」にする働きです。死ねば浄土へ往き、仏に生まれられることが、平生にハッキリすることを「往生一定」といいます。
真宗宗歌に「永久のやみよりすくわれし 身の幸何にくらぶべき」とあるように、長らく苦しめてきた「死ねばどうなるか分からぬ心」が晴れ、往生一定になれば、どんな幸せとも比較にならぬ、無上の幸福に生かされるのです。
全ての人を、「人間に生まれて良かった」と無上の幸福に救ってやりたい。これ一つが、阿弥陀仏の誓い願われたことでした。その願いどおり、私たちを無上の幸福にして下さる働きを、「満願」といいます。
南無阿弥陀仏の特効薬には、「死後が暗い心の病」を一念の瞬間に治し、無上の幸福にする凄い効能があります。これを「破闇満願」と言われるのです。名号を頂き破闇満願させられた無上の幸福を、「信心」とも「信楽」ともいいます。
信楽に救い摂られたならば、名医の弥陀と、案内者の釈迦、その教えを伝えてくだされた方たちの大きなご恩を知らされます。その深い感謝から称えずにおれないお礼が、念仏なのです。そこまでは聴聞に極まる。私たちが幸せに生きる道を親鸞聖人は明らかにしてくだされたのです。
(R4.3.15)