光に向かう親鸞会の青年たち6
会計士の本当の仕事
奈良県 飯村洋平(仮名)
将来の仕事を考え始めたのは、3年生の時でした。
その時は、専門的なスキルを身につけて、勉強していることがそのまま仕事に直結するような、職業に就きたいと、思っていました。
大学が経済学部ということもあり、将来は公認会計士になろうか、と漠然と考えていましたが、生きる目的を知らされた自分として、仕事はどう活かせるのか、最初はよく分かっていませんでした。
しかし、親鸞会で、仏法を聞けば聞くほど、会計士の勉強を進めていけばいくほど、重要性が知らされてきたのです。
条文によれば、会計士の使命は、
「監査及び会計の専門家として、財務書類の情報の信頼性を確保することにより、会社の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与する」
と、あります。
これをもう少し平たい言葉で言えば、会計士が企業の財政状況を正しくチェックすることで、企業が公正に活動でき、ひいては社会の人々の経済生活がより快適になる。会計士はその下支えをする、ということです。
確かに、その意味で会計士の役割は大事です。しかし、より長く快適に生きて、何をするのか。これこそ人生の目的であり、根底にある問題です。それが分からなければ、より良くより長く生きる意味もなくなってしまう。
長く延びた命も、やがて消える時が必ず来る。それでは、一体何のために生きてきたのか分からない、ということになる。
たった一度しかない人生は、仏法を聞いて本当の幸福になるため。その上で、人々の経済生活に少しでも支障があってはならない。会計士は経済面からそのサポートをする。
なぜ生きるということが明らかになってこそ、会計士の仕事が本当の意味で生きてくる、と知らされました。
仕事を通じて私と触れたことで、それを縁として、「この人には何かがある!」と感じられるような、何かそこに深い教えの匂いのある会計士になりたい。それが私の夢であり、その実現にむかって、今年、会計士試験に挑戦します。
お金より大事なこと
長野県 立川浩治(仮名)
私は、ある金融機関で、長期間延滞している方から借金を回収する仕事をしています。債務者と面談をしていると、とても悲しくなることがあります。
最近、一番心が痛んだのは、生前一括贈与(親が生存中に農地を子どもに贈与すると、贈与税を納税しなくてよくなるが、親の生存中に農地を売ると贈与税がかかるという制度)ということに関してでした。
農地を生前一括贈与されていた農家で、数年間の延滞金が一千万円以上ある人がいました。昨今、「ワーキングプア」といわれ、いくら働いても生活保護でもらえるお金も稼げない人が増えていますが、この方も農業では生活できず、土木作業の日雇いと年金で生活しています。
債権者からすれば、担保の農地を売ってもらうのがセオリーなのですが、100歳近くになる父親が生きているために、農地を売ると、数百万円の贈与税が発生します。もし父親が死ねば、贈与税を納めずに、担保処分が可能です。
さて、こういう場合、どう対応すべきか。
保証人に請求するという手もありますが、本件の場合、保証人もお金がない人でした。ない袖は振れません。
面談の場にいたある人は、父親が早く死ねばいいのにと言いました。100歳真近の老人に、これから先なんの楽しみがあるだろう。そんな老人の命より、この1000万円の借金の整理のほうが重いんだと。
仏法を聞いていなかったら、私もそういう心になったかもしれません。たしかに、債権者・取立屋としては、そういう発想が大事なのかもしれません。しかし、人命は地球より重い、ましてや借金を理由に命を捨てるなんてあってはならない。
そう言うと、債務者の方は涙を浮かべていました。そして、返済の方法を真剣に考えると約束し、現在、一部入金を続けて、来年には完済する見込みが立っています。
私と面談した延滞者が、少しでも本当の幸福に近づくことができるよう、ともに光に向かって進ませていただきたいと思います。