一人一人に寄り添う看護を
白木香織 さん
どうして人を殺してはいけないのか——。
"17歳の少年"の犯罪が頻繁に報道され、この問いが全国に投げかけられた平成12年、白木さんもちょうど17歳だった。
「私の中にも答えがなく、自分自身が生きねばならない理由も分からなかった。それが親鸞聖人の教えに出遇い、知らされたんです」
人を殺してはならないのはなぜか。どんなに苦しくとも自殺してはならない理由は何か、明解な答えに心が躍った。
大学で哲学を専攻していたが、将来は生命の尊厳をサポートできる仕事がしたいと思い、卒業後は看護師を目指し、看護学校に3年間通った。
今年3月、国家試験に合格。4月から富山県内の総合病院に勤めている。
看護学校で何度も教えられたのは、「看護師は、病をみるのではなく、人を看る」ということだった。
「不安に思うことは人によって違いますよね。表情をよく見て、その方の気持ちを知る目を養っていきたい。接する患者さんがどんなに多くなっても、一人一人の命に尊厳な目的があることを思い、健康のお手伝いをさせていただきます」
命の本当の尊さを伝えたい
栗原英二 さん
大学の理工学部から再受験し、栗原さんは今、医学部で学んでいる。
「もともと医者を目指していたので、受け直すつもりで理工学部に入ったんです」
だがその時は単に名誉にあこがれ、なぜ医師になるのか確固たる信念がなかった。
「仏教を聞いたきっかけは、親鸞会会員の先輩から『生命の尊厳、考えたことある?』と尋ねられたことでした」
生きる目的は何かという議論になり、「生きること自体に価値がある。だから延命にも意味がある」と主張すると、「なぜ生きるかの問いに『生きるために生きる』では答えにならない。意味不明である」と懇々と諭された。
さらに、「たとえ一流の技術や知識があっても、人生の意味を答えられないようでは本物の医師にはなれないよ」と言われ、言葉に詰まった。
「技術や知識だけでは駄目なのか。何ということを言うのだろう。
しかし、よくよく考えれば納得できる。
命を救うのが医師の役目だ。では、その命は何のためにあるのか。命の根本が分からなければ、救うことに力が入るはずがないではないか」
「あの出会いがなければ、今の自分はありません。私も命の本当の尊さを伝えられる医師になりたいです」
(プライバシー保護のため、個人名は仮名にしてあります)