突きつけられた問い"なぜ生きる"
自殺者 3万人時代に提言
歯止めのかからぬ自殺の急増に、政治、教育、マスコミ関係者らは、一様に困惑を隠せない。例えばそれは、全国紙・社説の論調の切れの悪さに象徴されている。
だれ一人、解決への舵取りのできぬこの問題を、どうとらえるか。
警察庁の発表によると、平成17年の自殺者総数は、3万2552人に達した。3万人を超えたのは、平成10年以降、これで7年連続となる。
自殺者の内訳を見ると、年齢別では、60歳以上が多く、全体の約30%を占めた。動機別では、健康問題、次いで経済・生活問題で全体の71%。職業別では無職者が群を抜いて47%となった。
人生の難度海におぼれる人たちに、弥陀の願船ましますことをいかに伝えるか。平成の親鸞学徒の使命は重大である。
(参考リンク 自殺者統計)
「単線社会は折れやすい」
朝日新聞 平成14年8月20日
時代の変動が大きいほど自殺者は増えるといわれる。彼らを襲った最大のものはバブル経済とその崩壊であろう。
戦後の日本で、人口あたりの自殺率が異常に高まったのは、1950年代半ばのことだった。「戦後10年」と「バブル崩壊後10年」に共通項があるように思えてならない。
戦争もバブルも、国民が単一の目標目掛けて突き進んだという意味ではよく似ている。そんな時代が壊れたあと、渦中を懸命に生きた人が落差に耐えられなくなり、自らを死に追い込むのかもしれない。
一つの価値観で生きる「単線社会」は折れやすい。一つに失敗しても、別の線路が用意されている社会。多様な価値観が共存する社会。「単線社会」を、そうした「複線社会」に変えていくしかないのではないか。
不況がもたらした 社会の病理
読売新聞平成14年7月26日
不況の時ほど自殺者が多いということだ。
何よりもまず、政府も経済界も、この深刻な経済状況を一刻も早く改善するよう全力を挙げるべきだ。
仕事や生活上の強いストレスが原因でうつ病を患い、適切な治療を受けないまま死に走ってしまうケースも多い、と医療関係者は指摘している。
企業の産業医や地域の医療機関などを中心に、心の病に気づき、支援する制度を充実させなければならない。
自殺では予兆があったにもかかわらず、家族や同僚など周囲の人が気づかないことも多いといわれる。こうしたことが家族を苦しめるケースも少なくない。
自殺に追い込まれた人や残された家族の心の痛みに、深く思いをはせた対策が求められている。
「世に恥ずべき 社会病理だ」
毎日新聞平成14年7月26日
自殺者の6割強を50歳以上が占める現実は、高齢化が進むほど絶望的になる人が増えると暗示しているようだ。懸命に働いて、楽をすべき年代に入った後、明日への希望を失うのではあまりに悲しい。
自殺を個人的な事情で片付け、弱い者が選ぶ道などと考えていてはならない。社会病理ととらえ総合的な施策を講じる必要がある。
昨年度から厚生労働省が自殺防止対策に予算をつけて取り組み出したが、到底同省だけでは対応できない。
交通死が最悪となった70年、政府は交通安全対策基本法を制定し、国、地方自治体、関係諸団体を巻き込んだ対策に乗り出し、死者数を半減させた。自殺対策は交通対策以上に困難だろうが、幅広い施策を講じるには同様の取り組みが不可欠ではないか。