家族再生 〈第1回〉 沈黙の夫婦が肩寄せた日
「こんなまめな人とは知らなかった」
今年から、「団塊世代」の大量退職が始まります。仕事が生きがいだった企業戦士たちの多くは、定年後の家族とのつきあいに不安を抱いているようです。家庭を顧みなかった付けで生じた心の溝。修復できず熟年離婚となるケースが増えています。
親鸞会では、壊れかけた家庭でも、仏法で心が通じ合い、明るさを取り戻した例があります。そんな家族再生のドラマを紹介しましょう。
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夫婦の会話らしい会話が、いつのころよりか、なくなっていた。
「何だ、その言い方は!」
「そっちこそ何よ!もう、あんたとは話ししないから!」
口を開けば、些細なことでケンカになった。だから黙っているのがいちばん、互いにそれでいいと思っていた。
北沢憲治さん(57)信子さん(52)夫妻は、関東地方の閑静な住宅地に、家族5人で暮らしていた。会社員で仕事一途な憲治さんは、週末になると、決まって近所のゴルフ練習場に。全日本の大会出場を目指し、朝から一人黙々とクラブを振っていた。
一方、信子さんは社交的で、おしゃれなティーカップを集め、友人たちをもてなすことが大好きだった。
趣味も性格も違う夫婦の擦れ違いは、親子の間にも広がっていった。