突きつけられた問い"なぜ生きる"
自殺者 3万人時代に提言
自殺危機からの救出 人生の目的あればこそ
自殺者のおよそ8割は、少なくとも直前に、うつ病の状態に陥っていた、と多くの精神科医は指摘する。
うつ病自体は、本当は身体的な病気で、医学的にいえば、セロトニン、ノルアドレナリンなど脳内神経伝達物質の分泌のバランスが崩れた状態をいう。これは薬で元に戻すことができるので、自殺の危険が切迫している時は、物質的な治療法で、自殺の回避を行うという。しかし問題は、なぜバランスが崩れたか、その要因を取り除かねば、また同じ危険を繰り返す点にある。
うつ病は、長期間ストレスにさらされるとなりやすいといわれるが、ストレスの原因としては、仕事、家庭、人間関係など、複雑多岐である。それらすべてを取り除けたとしても、再び似た状況が生まれないともかぎらない。飽くまで対症療法で、根本的解決にはなっていない。
ところが、一度は自殺の危機にありながら、親鸞聖人の教えを知って、大きく立ち直った例がある。
大手企業の中間管理職をしていたT氏は、5年前、社運をかけたプロジェクトに参画し、仕事上の失敗、上司と部下との板挟みでうつ状態となり、自殺寸前まで追い詰められていた。
T氏は休養と薬で、3ヵ月後には職場復帰できるほど快復できたが、
「療養中、初めて自分の人生を見つめ直すことができた」
と、親鸞聖人のみ教えに触れ、人生が大転換したことを喜ぶ。
「今まで生きる目的を知らず、どうでもいいことに振り回されすぎたのです」
釈尊は『大無量寿経』に、
「世人薄俗にして共に不急の事を諍う」
と教えられた。
財産、名誉、出世、家庭などを獲得することと、人生の目的は、全く別次元の問題であり、人生の目的こそが、最も大切な問題なのだ。
そこに気づくと、日々心を悩ます出来事も、人生の目的を果たすうえの試練、意味ある苦しみと受け止められる。
「自分の思いどおりにならない人や物を、いたずらに憎んだり敵視して、余計私は苦しんでいました。今も苦しみはありますが、人生の目的に向かっていける身の幸を喜んでいます」。
T氏は新しい人生を踏み出した。