老い・肉体という牢獄(後編)
「未来の真の明かり 伝えたい」

竹崎法子 さん

親鸞会 人生

 65歳以上の高齢者の占める割合が全人口の7パーセント以上で高齢化社会、14パーセントで高齢社会、21パーセントを超えると超高齢社会と呼ばれる。日本は平成19年、主要先進国中、最初の超高齢社会に突入した。
 だれもが行く道。介護は他人事ではない。社会福祉士の資格を持つ竹崎さんは、高齢者を支える日々の中で、行政だけでは解消しえない「老い」の問題を、親鸞聖人のみ教えを通して見つめている。

「デイサービスの日は、うれしくていつも朝早く目が覚めるのよ」
 介護施設を訪れる高齢者から、よく聞かされる言葉である。

 デイサービスとは日帰りの介護を指す。
 自宅で暮らしながら、週に2、3度、施設へ来て介護を受ける。入浴させてもらったり、体操や手工芸、アサガオ栽培などの園芸やおやつ作りで半日を過ごす。

 同じ境遇の高齢者同士、おしゃべりできるのが何よりうれしい。
 職員から大事にされ、快くトイレの世話もしてもらえるので、思う存分お茶が飲めると喜ぶ人も少なくない。
「いつお迎えが来るか分からないんだから。今のうち楽しまないとね」
「そうそう、いっぱいおいしい物食べて、皆としゃべってね」
 利用者たちの会話は、一見、屈託なく楽しげだが、笑顔の奥に陰りも漂う。
 わが家で肩身の狭い思いをしている裏返しともいえるからだ。

「社会的なつながりも、健康も若さも失われる一方の高齢者は、この先自分がどうなるのか、皆、先が見えないんです。その心はだれも分かりませんし、分かったとして、どうしてあげようもないんです」
 高齢者の抱える孤独は、若い人のそれとは異なるものと竹崎さんは語る。

本当に必要なのは未来の真の明かり

 施設で行う手芸などの作業の中で、重視されているものの一つがカレンダー作りだ。
 1カ月分のマス目がかかれた白い紙に、自分で日付を入れ、利用日や行事を書き込む。イラストも加え、自分だけのカレンダーができ上がる。

 なぜカレンダーなのか。

 福祉職員となって間もないころ、神奈川県の葉山町で職員研修を受けたことがある。50代くらいの理事長が言った。
「運動会や花見、夏祭りなどの季節行事や、外食、買い物、ドライブなどを短い周期で入れることが大事です。先の楽しみを常に与える。そうすると、そこまでは生きようという気持ちになる」
 だからカレンダーを作り、予定をいっぱい入れることは、高齢者の生きがい作りに大きな効果があると力説していた。

 竹崎さんは言う。
「立場上、高齢者に生きる道筋をつけるのが仕事です。それは他人の人生が自分の手の中にある感じです。『今日は楽しかった。明日もまた』と、先に希望を持たせ、明日へと向かわせる。でもそうやって生きてどこへ行くのか?どこへ連れていくのか?考えずにおれなくなるんです

 ゴールがなければ、歩き倒れしかない。高森顕徹先生から聞かせていただくとおりだった。

 施設を利用する人たちは、毎年10人以上亡くなっていく。
 そう遠くない未来、自分の番が来ることを、利用者は薄々感じている。

 ここ数日、姿を見せなかったTさんの家から電話があった。
「先週、おばあちゃんが突然倒れて、入院させましたけどそれっきりで……」
 Tさんは亡くなった。そのことを、仲良しだったグループに告げにいく。
「Tさん、お亡くなりになったそうですよ」
 できるだけ優しく言うよう努めているが、一瞬、沈黙、戸惑いが見える。だがすぐに「仕方ないよねえ」という空気に変わる。

 デイサービスの日程は予定どおり進み、施設内には笑い声も響く。だがその瞬間にも、目に見えぬ命の砂時計の砂が落ち続けているのを竹崎さんは感じている。

「高齢者に生きがいを、とは行政側からもよくいわれます。でもその生きがいとは、死を待つだけの耐え難い時間を、ごまかす手段でしかないのでは?と次第に思えてくるんです。本当に必要なのは未来の真の明かり——人生の目的ではないでしょうか

すべての苦労が報われる世界

 人生の決勝点を知らぬまま、この施設にたどり着く人々。
 残された日々に意味がある、すべての苦労が報われる世界があると、伝えたい思いは込み上げてくる。

「仏さまはね。慈悲のかたまりなのよ。苦しんでいる人を何とか助けたいと思っていてくださるのよ」
「おばあちゃん。南無阿弥陀仏にはね、ものすごいお力があるんだよ」

 その意味を知りたがった80代の老婦人には、心を込めて法を届けた。
 終日、一人天井を見つめながら、静かに念仏を称える老婦人。病魔に冒され、苦痛に耐えながらも時折、目元に柔和な色を浮かべる。
 人生の終幕に、一念の弥陀の救いが届くことを念じつつ、そっと耳元で「南無阿弥陀仏」と称え続けた。

(プライバシー保護のため、個人名は仮名にしてあります)

 

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207父の遺言「本尊は御名号」
206「友よ、はらからよ」
205「これこそ真の浄土真宗や」
204真宗の正しい御本尊
203素晴らしい仲間と過ごした 素晴らしき日々
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201「仏法聞かせてもらいや」亡き叔母の願い
200>父母の恩 重きこと 天の極まり無きが如
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196>親鸞聖人の教えを聞くのが好き!
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194苦難の人生 届いた光
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192幸せロボット 作りたい
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186父のメッセージ 今も心に
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172友の人生の疑問から、親鸞聖人の教えへ
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1692人で182歳 幼なじみと
16890代車いすで夫婦そろって
167元気の源は仏法に
16640年求め 親鸞聖人の教えと再会
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160夫婦で親鸞学徒に
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158夢のプランに至福の日々
157親鸞聖人のみ教えで一つに2
156親鸞聖人のみ教えで一つに
155正御本尊をわが家に
154香川から移住 毎日が幸せ
153万人が同じ喜びの世界へ
152後生の解決一つのため
151「ドメインの力、感じます」
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149前田町に参詣以来 40年ぶり
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145届けたい真実
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142「ロシアより愛をこめて」第4回
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113〝ただ念仏〟の〝ただ〟に驚く
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110『歎異抄をひらく』で生まれ変わる『歎異抄』
109龍谷大学でも聞けなかった「一念」
108光は東洋にあった
107歎異抄とは
106やっと遇えた 真実の仏法
105仏法とのご縁は末代の宝
104どんな姿でも生きねばならない理由
103『歎異抄』読めど分からず
102親鸞会で知った、歎異抄の本当の意味
101疑問だった「死んだら極楽」
100毎日楽しければいいと思っていました。
99正信偈を教えてもらえる。行こう
98いじめで死ななくてよかった
972000畳の親鸞会館に感動
96脱・ひきこもり
95私も親鸞会会員に 八十八箇所 彷徨の果て
94ポジティブなエンジニアになれる
93私も親鸞会会員に 97歳 平生業成に驚き
92ニート少年が大変身
91サイデンステッカー教授
90『正信偈』にこんな意味が
89因果の道理を信じて、苦境を越えた
88宗教は何を救う!?
87かくて少年はニーチェを捨てた
86彫刻と私 光はさした
85山で暮らしても
84正しい教えは、2000畳をも狭くした
83上を目指してきたけれど
82なんのために勉強をするのか
81太宰治もわからなかったこと
80今、死ぬわけにはいかない
79正信偈の意味が分かった
78亡き妻に感謝
77こうまでして仕事をしなければならないのか
76生長の家から親鸞聖人の教えに
75働くために生きているのではない
74会計士の本当の仕事
73因果の道理を知ればこそ
72生きてきた中で一番幸せ?
71尊い人命 ロボットで救う
70瞳に光 聞法の夜明け
69会社人間で終わりたくない
68患者の立場に立った医療を
67家族で仏法を
66人生の荒波に翻弄されている人に、真の幸せを
65仏法がその答えを教えてくれた
64利他の精神でカウンセリング
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62仕事を元気に続けられるのは聞法あればこそ
61自己を磨く
60感謝の心で乗り切る
59因果の理法を仕事に生かす
58「なぜ生きる」の光をすべての人に
57広告のスペシャリストに
56何かあるに違いないと思った
55「因果の道理」が仕事の推進力
54万人共通のもの ?生老病死?
53頭上に満天の星
52モンゴルでの生活
51ハラホリンの草原をゆく
50大草原の風の説法
49自殺危機からの救出 人生の目的あればこそ
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47突きつけられた問い"なぜ生きる"
46ある医学部生の体験
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40難問にであう
39真の医療って?
38団塊は第2の人生に燃ゆ
37涙の底に光あり
36もっと『不都合な真実』
35世界が生き返った
34修羅場なればこそ
33生んでくれてありがとう
32何で俺を生んだんや
31自殺してはならぬ理由
30こんなまめな人とは知らなかった4
29こんなまめな人とは知らなかった3
28こんなまめな人とは知らなかった2
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18一念で千古の闇室に光
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14死の恐怖体験
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