心かよう作業療法士に
石川県 Tさん
「患者さんから、『いつもありがとうね』『ほら、こんなにできるようになったよ』と、笑顔で言われる時がいちばんうれしいんです」
親鸞会の会員Tさんは今春、医学部を卒業し、作業療法士国家試験に合格した。
身体や精神に障害を持つ人に、手芸や園芸などの作業を通して、自立へ向けて指導をするのが作業療法士である。
4月より石川県の総合病院に勤務し、脳卒中の後遺症や骨折で、障害を負った数名を担当。入浴・食事・筆記などの訓練を一人一時間ほど、毎日行っている。
患者は肉体的な苦痛だけでなく、思いどおりにならない体へのいらだちと、結果がすぐには表れない治療を続ける精神的な負担が大きいという。
「だからこそ、つらい気持ちが吹き飛ぶような元気な応対を心がけています」
患者にとって、〝できることが増えてきた〟と実感することが大切。できた時には大げさなほど褒め、リハビリに取り組む積極的な気持ちをサポートしている。
だが、医療の限界を突きつけられたこともある。
入院してきた70代の男性に、「これまで何をされていたんですか?」と尋ねると、「大工の仕事一筋、趣味は何もないよ」と返された。畑仕事一つに生きてきたおばあさんもある。
患者は退院後の生活をどれだけ考えているのだろうか。ふと心配になる。
家に戻りたい一心で治療に専念しているが、いざ家に帰れても、そこには冷たい現実が待つ。以前のような仕事はできず、生きがいの大半は失われている。
「家族の世話になりながら、ただ生きていく。そこで、壁にぶち当たる人が多いのではないでしょうか」
そこまでして生きる意味は何か?その問いに医学は答えられない。苦しくとも生きねばならない理由を知らされた親鸞学徒・親鸞会の会員にしか答えられないことだと、Tさんは思う。
「いつか仏法をお伝えできるような、何でも話せる深い人間関係を築きたい。そんな一流の作業療法士を目指します」